
結論からいうと、「視力が下がった」「数か月続けても変化がなかった」という体験談だけで、リジュセアの効果がなかったと判断することはできません。
リジュセアは視力を回復させる治療ではなく、近視の進行をゆるやかにすることを目的とした治療です。効果を考えるときは、裸眼視力だけではなく、屈折値や眼軸長の経過もあわせて見る必要があります。
ブログや口コミには「視力が下がった=効果がなかった」と誤解したまま書かれている投稿もあります。
例えば「視力が0.9から0.7になった」「何か月も続けたのに効果がなかった」「結局やめてしまった」という投稿を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか?
これから治療を始めようと考えている親御さんや、すでに治療を続けているご家庭なら、「本当に続ける意味があるの?」「うちの子も同じようになるのでは?」と不安になりますよね。
口コミは治療を検討するうえで参考になりますが、それだけで効果の有無を判断するのは危険です。
この記事では実際に検査室で多くの子どもを見てきた経験をもとに「効果がなかった」と言われる体験談にはどんな勘違いがあるのかを分かりやすく解説します。
実はその体験談、多くがリジュセアの目的を勘違いしています
リジュセアは、視力を回復させるための目薬ではありません。目的は、近視の進行をゆるやかにすることです。子どもは身長が伸びるように、眼球も成長に伴って少しずつ伸びていきます。リジュセアは、この眼球が前後に伸びる眼軸長(眼球の前後の長さ)の伸びを抑え、近視が進みにくくする治療です。つまり、「視力が1.0になったか」「前回より見えるようになったか」を目標にする治療ではありません。
もちろん、治療中でも視力が少し下がることはあります。しかし、それだけで「効果がなかった」と判断することはできません。何も治療をしなかった場合より、近視の進行を抑えられている可能性があります。視力の変化と近視の進行は必ずしも一致しないためです。
近視の進行は裸眼視力だけでは評価できないため、「視力が下がった=効果がなかった」とは言い切れません。
では、なぜ視力だけでは効果を判断できないのでしょうか。次で詳しく解説します。
「視力が下がった=効果がない」ではない理由を専門家が解説
裸眼視力だけを見ると、「リジュセアは効いていなかったのでは?」と不安になりますよね。しかし、裸眼視力だけで治療の効果を判断することはできないということです。
その理由は実際に検査でよくあるケースを見るとわかります。
視力検査では、「少しでもよく見たい」と思って、目を細めたり、一生懸命見ようとしたりするお子さんがたくさんいます。近視では、目を細めると一時的によく見えてしまうことがあります。そのため、前回より視力が良く出る日もあります。
子どもの視力検査は、その日の体調や集中力などの影響を受けやすく、結果が変動することがあります。学校帰りで疲れていたり、集中できなかったり、寝起きで機嫌が悪かったりすると、いつもより視力が低く出ることもあります。
つまり、裸眼視力は毎回まったく同じ結果になる検査ではなく、さまざまな要因で変動します。そのため、「今回は0.7だったから効果がなかった」「今日は1.0見えたから治った」と判断するのは適切ではありません。
そのため、近視治療では裸眼視力だけでなく、眼軸長や屈折値がどう変化しているかを合わせて確認することが大切です。
リジュセアの体験談を正しく判断する3つのポイント
ここまでお伝えしたように、リジュセアの体験談は視力の数字だけでは正しく判断できません。では、どのような点を見れば参考になるのでしょうか。体験談を読むときは、次の3つのポイントを意識してみてください。
視力だけで効果を判断していないか
「視力が下がったから効かなかった」と書かれていても、それだけでは治療効果は判断できません。本来確認したい眼軸長などの情報が書かれていないことも多いため、参考程度に読むようにしましょう。
治療期間が十分だったか
リジュセアは、近視の進行を長期間かけて抑える治療です。そのため、数週間や1〜2か月で効果を判断することはできません。短期間の感想だけで「効かなかった」と判断するのは早すぎる場合があります。
近視は多くの場合、学童期に発症し、小学校高学年にかけて進行が速く、10代後半以降で進行が落ち着くことが多いとされています。
2025年に公表された「低濃度アトロピン点眼液を用いた近視進行抑制治療の手引き」では、短期間の投与で治療効果を期待するものではなく、近視の進行が安定する10代後半までは毎日治療を継続することが望ましいとされています。
ただし、治療をいつまで続けるかは一律ではありません。年齢や近視の進み方、屈折値や眼軸長などを定期的に確認しながら、処方した眼科医と相談して判断します。
小さな視力変化に一喜一憂していないか
視力は検査時の体調や集中力、目の細め方などによって変動することがあります。実際の診療でも、視力が0.1〜0.2程度変わることはよくあります。一度の視力だけで判断せず、眼軸長や屈折値も含めて経過を見ることが、リジュセア治療を正しく評価するポイントです。
リジュセア治療で後悔しないために親が知っておきたいこと
リジュセアの体験談は、治療を始めるか迷っているときや治療中の不安を和らげる参考になります。しかし、「視力が下がった」「効果がなかった」という言葉だけで判断すると、本当の治療効果を正しく判断できなくなることがあります。
リジュセアは視力を回復させる治療ではありません。近視の進行をゆるやかにするための治療です。だからこそ、視力の数字だけで判断せず、眼軸長や屈折値も合わせて長い目で見ていくことが大切です。眼軸長や屈折値は、近視がどのくらい進行したかを客観的に確認できる指標だからです。
よくある質問
リジュセアを使っていても視力が下がったら、効果がないということですか?
リジュセアはどのくらいの期間続ければ効果を判断できますか?
点眼が2滴入ってしまったけど大丈夫でしょうか?
リジュセア以外に家庭でできることはありますか?

たなか 視能訓練士(ORT)
眼科医療の現場で10年以上、子どもの視力検査や近視関連の検査に従事。検査室で実際に受ける相談や、保護者が誤解しやすいポイントをもとに、専門的な内容をできるだけ分かりやすく解説しています。
本記事の参考文献・出典
本記事では、リジュセアミニおよび低濃度アトロピン点眼による近視進行抑制治療について、以下の診療指針、公的医薬品情報、臨床試験を主な参考資料としています。
- 低濃度アトロピン点眼液を用いた近視進行抑制治療の手引き
低濃度アトロピン点眼液を用いた近視進行抑制治療の治療指針作成委員会.日本眼科学会雑誌.2025;129:851-854.近視進行抑制治療の目的、適応、検査、経過観察、治療継続・中止の考え方などを示した国内の治療指針。 - PMDA:リジュセアミニ点眼液0.025% 医療用医薬品情報
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA).最新の電子化された添付文書、患者向医薬品ガイド、インタビューフォーム、審査報告書などを確認できる公的情報。 - Ohno-Matsui K, Igarashi-Yokoi T, Migita Y, Yamakawa Y; ORANGE study investigators. Efficacy and Safety of Low-Concentration Atropine in Slowing Myopia Progression in Children in Japan: The Randomized, Double-Blind Phase II/III ORANGE Study.
Ophthalmology Science. 2025. doi:10.1016/j.xops.2025.100960.日本の5〜15歳の近視児299人を対象に、0.025%アトロピン点眼液などの有効性と安全性を24か月評価した無作為化二重盲検プラセボ対照試験。 - Yam JC, Li FF, Zhang X, et al. Two-Year Clinical Trial of the Low-Concentration Atropine for Myopia Progression (LAMP) Study: Phase 2 Report.
Ophthalmology. 2020;127(7):910-919. doi:10.1016/j.ophtha.2019.12.011.0.05%、0.025%、0.01%アトロピン点眼による2年間の近視進行抑制効果と安全性を検討したLAMP Studyの第2相報告。