「近視は遺伝だから対策しても意味がない。」
そんなふうに思っていませんか?
確かに、近視は遺伝の影響を受けます。
しかし、遺伝だけで将来の視力が決まるわけではありません。
むしろ、遺伝的なリスクがあるお子さんほど、早めの対策が大切です。
この記事では、10年以上子どもの目を検査してきた視能訓練士が、「遺伝だから仕方ない」と思っている親御さんに知ってほしい3つの事実を解説します。
親が近視だからこその強み
「親が近視だから仕方ない」と思っていませんか?実は、親が近視だからこその強みを見逃しています。
親が近視だからこそ、「もしかしたら近視になりやすいかも」と早く気づけます。
これが親が近視だからこその最大の強みです。
例えば、屋外で遊ぶ時間を増やす。20-20-20ルールを取り入れる。学校健診で視力低下を指摘されたら、早めに眼科を受診する。どれも特別なことではありませんが、この積み重ねがお子さんの目にとって大切です。
実際に検査室でも「もっと早く対策を始めていればよかったなぁ」と話される方によく出会います。
ですが、この記事を読んだあなたはまだ間に合います。
今日がお子さんの近視対策を始める一番早い日です。
遺伝は変えられません。でも、その後の行動は今日から変えられます。「遺伝だから仕方ない」と諦めないでください。そうではなく、「遺伝があるからこそ今できることをやろう」と考えてみてください。
遺伝は影響するが、環境も大きく関係する
例えば、学校から帰ってきたお子さんを想像してください。宿題のあと、タブレットで動画を見て、そのままゲームを始めることもあります。
夕食後は本を読んだり、ゲームやYouTubeを見たりして過ごすこともあります。
気づいたら外で遊んだのは体育の時間だけ、という日も多いのではないでしょうか。
このように、近くを見る時間が長く、屋外で過ごす時間が少ない生活があります。こうした生活は、近視が進みやすい環境の一つです。
実際に、1日2時間程度の屋外活動は近視の発症予防に有効とされ、すでに近視のある子どもの進行についても、抑制効果が報告されています。
「毎日2時間は難しい…」と思いますよね。
我が家も共働きで、帰宅後は夕飯やお風呂であっという間に寝る時間です。平日にまとまって外遊びをするのは現実的ではありません。
でも、登下校で歩く時間や公園遊び、休日の散歩など、少しずつ屋外で過ごす時間を増やすだけでも意味があります。また、「ゲームや勉強をやめさせなければ」と極端に考える必要もありません。
大切なのは、長い時間近くを見続けないことです。例えば、「20-20-20ルール」というものがあります。
20分近くを見たら20秒間、約6m先を見るというルールです。
これを取り入れるだけでも、目を休ませる習慣がつくれます。遺伝は変えられませんが、生活習慣は今日から変えられます。
親が近視だからと諦める必要はありません。今できることを一つずつ続けることが大切です。
近視は予防・進行抑制が期待できる時代になった
ひと昔前までは、「近視になったらメガネをかけるしかない」と考えられていました。でも、今はそれだけではありません。近視になることを防いだり、進み方を抑えたりする方法が少しずつ増えてきています。
先ほどは、家庭内ですぐに取り組める方法を紹介しました。屋外時間を増やすことや、20-20-20ルールなどです。
それに加えて、眼科では近視の進行を抑えることを目的とした治療を受けられるようになってきています。
現在は、低濃度アトロピン点眼や特殊設計のメガネ、オルソケラトロジーなど、近視の進行を抑えることを目的とした選択肢があります。
ですが、私の経験上、近視進行抑制治療を積極的に行っていない眼科では、その治療について親御さんに説明される機会はほとんどありませんでした。他院で働く視能訓練士にも同様の話を聞いています。
たとえば視力が1.2見えている場合などは、「近視はありますが、今は問題ありませんね」という説明のみ。必要に応じてメガネを作成して終わったりするケースがほとんどです。
そのため、気になる場合は保護者自身から「近視の進行を抑える治療はできますか?」と相談してみることをおすすめします。
それぞれ対象や適応が異なるため、眼科で相談し、お子さんに合った方法を選ぶことが大切です。
もちろん、これらは近視を治す治療ではありません。しかし、早い時期から始めることで、近視の進み方を抑えられる可能性があります。
「親が近視だから、もう仕方ない」と思う必要はありません。
遺伝は変えられません。でも、生活習慣を見直したり、眼科で相談したりすることはできます。今できることは、たくさんあります。知るのが早いほど選べる方法も増えます。お子さんの将来のためにも、「まだ大丈夫かな」と様子を見るだけにしないでください。一度、眼科で相談してみてください。
まとめ
近視は遺伝の影響を受けます。しかし、「親が近視だから仕方ない」と諦める必要はありません。親が近視だからこそ、お子さんが近視になりやすいことを早く意識できます。その気づきがあれば、生活習慣を見直したり、必要なタイミングで眼科へ相談したりできます。そうすることで、一歩早く行動できます。これが、親が近視だからこその強みです。
もしこの記事を読んで「何か始めてみよう」と思ったら、まず今日からできることは次の3つです。
屋外で過ごす時間を無理のない範囲で増やす
近くを見る作業の合間に休憩を入れる
学校健診で指摘されたときや、見え方に変化があるときは眼科を受診する
すべてを一度に始める必要はありません。まずは、お子さんの普段の見え方や生活を確認することから始めましょう。
本記事の参考文献・出典
本記事の内容は、日本眼科学会、日本近視学会および小児近視に関するコンセンサス声明などを参考に構成しています。
- 日本眼科学会:近視進行抑制
屋外活動を含む近視の発症・進行に関係する環境因子や、近視進行抑制の考え方について解説されています。 - 日本眼科学会:眼科Q&A「両親とも近視なので、子どもも近視になりますか。」
近視に遺伝と環境の両方が関係することや、1日2時間以上の屋外活動に関する研究報告が紹介されています。 - 世界小児眼科・斜視学会(WSPOS):小児の近視治療に関するコンセンサス声明 2025
屋外活動時間の増加を含む小児近視への介入について、ランダム化比較試験やメタ解析などの研究をもとにまとめたコンセンサス声明です。 - 日本近視学会:近視疾患診療、診断のガイドラインなど
近視の定義や分類、近視疾患の診療・診断に関する情報が掲載されています。

たなか 視能訓練士(ORT)
眼科医療の現場で10年以上、子どもの視力検査や近視関連の検査に従事。検査室で実際に受ける相談や、保護者が誤解しやすいポイントをもとに、専門的な内容をできるだけ分かりやすく解説しています。