私自身、小学2年生の娘を育てています。
視能訓練士として10年以上、小児の検査に携わってきましたが、いよいよ他人事ではなく「このまま自分のように子供の近視が進んだらどうしよう」と心配になることがあります。
だからこそ、新しい近視治療や近視進行を抑える方法については、国内外の研究やガイドラインにも目を通し、日々情報をアップデートしています。
そんな中、2026年6月1日に日本でも小児の近視用メガネレンズ「ミヨスマート(MiYOSMART)」が正式に発売され、保護者や眼科医療の現場でも注目を集めています。
この記事では、ミヨスマートとはどのようなメガネなのか、普通の近視用メガネとの違い、海外の研究ではどのような結果が報告されているのか、費用やデメリット、購入時の注意点について、視能訓練士としての臨床経験と子どもを育てる親の視点を交えながら、できるだけわかりやすく解説します。
2026年6月1日に国内発売されたミヨスマートの特徴
世界50か国以上で販売されている小児の近視用メガネレンズ
ミヨスマートは、特殊な光学構造を持つ小児向けの近視用メガネレンズです。HOYAによると、2025年9月時点で世界50か国以上で販売されています。
日本では2026年6月1日から国内販売が開始されました。海外では複数の臨床研究が行われており、近視進行や眼軸長の伸長を抑える効果について研究結果が報告されています。
コンタクトレンズのような着脱や点眼を必要とせず、眼鏡として終日装用できることが特徴の一つです。
DIMSテクノロジーとは?
ミヨスマートには、「DIMS(Defocus Incorporated Multiple Segments)」テクノロジーが採用されています。
レンズ中央には遠方を見るためのクリアゾーンがあり、その周囲には多数の小さなセグメントが配置されています。HOYAでは、周辺遠視性焦点ぼけ理論に基づき、網膜周辺部に近視性のぼけを作り出す構造と説明しています。
通常の眼鏡として近視を矯正しながら、この特殊な光学構造によって近視進行を抑えることを目的としたレンズです。
2年間のランダム化比較試験と6年間の長期追跡データ
DIMSレンズの代表的な研究として、香港の8〜13歳の近視児183人を対象とした2年間のランダム化比較試験があります。
2年間の近視進行は、DIMSレンズ群が-0.41D、通常の単焦点レンズ群が-0.85Dでした。また、眼軸長の伸びはDIMSレンズ群が0.21mm、単焦点レンズ群が0.55mmでした。
この研究では、通常の単焦点レンズと比較して、近視進行が約52%、眼軸長伸長が約62%少なかったと報告されています。
この2年間のランダム化比較試験は2020年に『British Journal of Ophthalmology』へ掲載されています。
その後、同じ研究参加者を追跡した6年間の長期研究が2023年に『Scientific Reports』へ報告されました。6年間継続してDIMSレンズを装用した群では近視管理効果が持続しており、途中でDIMSレンズを中止して単焦点レンズに戻した群でも、明らかなリバウンドを示す証拠は認められなかったと報告されています。
ただし、6年間すべてがランダム化比較試験として行われたわけではありません。最初の2年間のランダム化比較試験を終了した参加者を、その後追跡した研究である点は理解しておく必要があります。
近視管理用眼鏡ガイドラインでの位置づけ
日本近視学会が作成し、2025年に『日本眼科学会雑誌』へ掲載された「近視管理用眼鏡(多分割レンズ)ガイドライン(第1版)」では、MiYOSMARTとEssilor Stellestについて、適応、処方前検査、フィッティング、経過観察などの具体的な指針が示されています。
ガイドラインでは、多分割眼鏡レンズを装用しても近視そのものが治ったり軽減したりするわけではなく、将来の近視進行速度を一定量抑えることを目的とすると説明されています。
つまり、「かければ近視が治るメガネ」ではなく、成長期の近視進行を管理するための選択肢の一つとして考えることが大切です。
購入前に知っておきたい実際の流れとフィッティング
ミヨスマートは、通常の眼鏡と違い、眼科での適応判断や定期的な経過観察が重要になります。また、レンズの位置を適切に保つため、眼鏡店でのフィッティングも大切です。
眼科と眼鏡店の両方へ通う必要がある
ミヨスマートは、眼科医の診断により処方が必要と判断された場合に処方箋が発行され、その処方箋を持ってミヨスマートを取り扱う眼鏡店で作製します。
「近視管理用眼鏡(多分割レンズ)ガイドライン(第1版)」では、装用開始約2週間後に初期の経過観察を行い、その後は6か月ごとのフォローアップ受診が示されています。
また、HOYAは眼鏡店で3か月を目安にフレーム調整を受けるよう案内しています。
そのため、通常の眼鏡を一度作って終わりというよりも、眼科と眼鏡店の両方で継続してチェックしていくことを前提に考えておきましょう。
初回検査には時間がかかる場合がある
ガイドラインでは、正確な屈折度数を確認するため、シクロペントラート塩酸塩による調節麻痺下屈折検査が強く推奨されています。
調節麻痺検査を行う場合は、点眼後45〜60分程度たってから屈折検査を行うため、通常の視力検査より時間がかかることがあります。
小さなお子様を連れて受診するときは、当日の予定に少し余裕を持っておくと安心です。
フレームは「専用品」だけとは限らない
HOYA公式サイトでは、好みのフレームと組み合わせて使用できると案内されています。
一方、「近視管理用眼鏡(多分割レンズ)ガイドライン(第1版)」では、適切なフィッティングを保つため、調整可能で下方へずれにくいフルフレームを選択することなど、フレーム選びの条件が示されています。
そのため、「このデザインは絶対に使えない」と最初から決めるのではなく、希望するフレームがミヨスマートのフィッティング条件を満たしているか、取扱眼鏡店で確認してもらうのがよいでしょう。
なぜ精密なフィッティングが必要なのか?
ミヨスマートでは、自然な姿勢で正面を見たときに、レンズ中央のクリアゾーンと瞳孔中心が適切に一致していることが重要です。
「近視管理用眼鏡(多分割レンズ)ガイドライン(第1版)」では、センタリングの許容範囲は水平方向・垂直方向ともに1mm以下とされています。基準を満たしていない場合には、眼鏡店でレンズの再加工やフレーム調整を依頼することが示されています。
購入後も「ずり落ちていないか」「フレームが歪んでいないか」を定期的に確認することが大切です。
ミヨスマートの費用と他の近視管理との違い
ミヨスマートの販売価格は眼鏡店によって異なります。
筆者が2026年6月時点で複数の取扱眼鏡店へ問い合わせたほか、複数の販売店が公開している価格を確認したところ、フレーム代に加えてレンズ代77,000円(税込)と案内されているケースが多く見られました。
選ぶフレームや店舗によって総額は変わるため、購入前にレンズ代・フレーム代・保証内容を含めた総額を確認しておきましょう。
ミヨスマートのメリット
- 通常の眼鏡と同じように日中装用できる
- コンタクトレンズの着脱や洗浄・消毒が不要
- 毎日の点眼作業が不要
- 高い耐衝撃性を持つ素材が使用されている
ミヨスマートのデメリット
- 通常の眼鏡より購入費用が高くなる
- 新しい見え方に慣れるまで1〜2週間程度かかる場合がある
- 眼科での適応判断と定期的な経過観察が必要
- ミヨスマートを取り扱う眼鏡店で作製する必要がある
オルソケラトロジーや低濃度アトロピン点眼も、子どもの近視進行を管理する選択肢として使用されています。ただし、費用は医療機関や治療内容によって大きく異なるため、単純に金額だけで比較するのではなく、管理方法やお子様の年齢、生活スタイル、近視の進み方なども含めて眼科医と相談することが重要です。
ミヨスマートを作るまでの3つのステップ
ミヨスマートは、眼科医による適応判断と、眼鏡店での適切な作製・フィッティングを組み合わせて使用します。
ステップ①:眼科を受診して適応を確認する
まず眼科で診察と検査を受けます。
「近視管理用眼鏡(多分割レンズ)ガイドライン(第1版)」では、ミヨスマートの臨床試験で対象となった年齢は5歳〜18歳とされています。ただし、これは「5〜18歳なら全員が適応」という意味ではありません。
5歳未満には推奨せず、実際の対象年齢は最終的に眼科医が判断するとされています。
屈折度数については、調節麻痺下屈折検査における等価球面で、両眼が-0.5Dまたはそれを超える近視が対象とされています。
また、近視進行が確認された場合だけでなく、強度近視の家族歴がある場合や、本人・家族の希望が強い場合も処方対象になり得るとされています。
適応を慎重に判断するケースもある
ガイドラインでは、両眼視機能の異常(斜視・弱視・眼振など)、調節異常、円錐角膜、先天白内障などがある場合には、原則として禁忌または慎重な適応判断が必要とされています。
そのため、年齢や近視度数だけで自己判断せず、眼科で眼の状態を確認してもらうことが重要です。
ステップ②:ミヨスマートを取り扱う眼鏡店で作製する
眼科医からミヨスマートの処方箋が出されたら、ミヨスマートを取り扱う眼鏡店へ持参します。
HOYAでは、ミヨスマートを取り扱う眼鏡店に対して専用講習の受講を求めています。また、「近視管理用眼鏡(多分割レンズ)ガイドライン(第1版)」では、眼鏡作製技能士によって眼鏡が作製されることが望ましいとされています。
ステップ③:装用後も眼科と眼鏡店で定期的に確認する
「近視管理用眼鏡(多分割レンズ)ガイドライン(第1版)」では、次のような経過観察が示されています。
- 装用開始約2週間後:見え方への適応、装用時間、度数、レンズのセンタリングやフィッティングなどを確認
- その後:6か月ごとを目安に眼科で屈折検査や視力検査、眼軸長測定などを実施
HOYAは眼鏡店についても、3か月を目安にフレーム調整を行うよう案内しています。
近視進行の状態や年齢によって必要な検査頻度は変わるため、実際の受診時期は処方した眼科医の指示に従ってください。
ミヨスマートを使用する際の注意点と慣らし方
ミヨスマートは独自の光学構造を持つため、装用初期には見え方へ慣れる時間が必要な場合があります。
通常1〜2週間程度は慣れるための時間が必要
HOYAの取扱説明では、新しい眼鏡に慣れるまでの時間には個人差がありますが、通常1〜2週間程度必要とされています。
「近視管理用眼鏡(多分割レンズ)ガイドライン(第1版)」でも、装用開始後約2週間は、激しいスポーツ、球技、スケートボード、自転車、車などの運転操作に注意するよう示されています。
使用開始直後にみられることがある症状
HOYAでは、使用開始後の数日間に、まれにゴーストイメージ(二重像)、めまい、頭痛が生じる場合があると案内しています。
一般的には時間の経過とともに自然におさまる傾向がありますが、2週間経過しても不快感が残る場合は眼科医に相談してください。強い異常を感じた場合は、期間を待たず眼科を受診しましょう。
近視対策として意識したい生活習慣
ミヨスマートを装用している場合でも、生活習慣を整えることは大切です。HOYA公式サイトでは次のような生活習慣が案内されています。
- 1日2時間を目安に屋外で過ごす
- 手元を見るときは適切な明るさと姿勢を意識する
- 目との距離を30cm以上とる
- 30分に1回、20秒以上遠くを見る
なお、屋外活動については特に近視の発症予防に関するエビデンスが蓄積されています。すでに近視があるお子様でも、眼鏡による近視管理だけに頼らず、日常生活全体を整えていくことが大切です。
正しいフィッティングを保つための毎日のポイント
ミヨスマートでは、レンズ中央と瞳孔の位置関係を適切に保つことが重要です。子どもは活発に動くため、使用しているうちにフレームが歪んだり、ずり落ちたりすることがあります。
1. フレームの変形に注意する
片方のつるだけを持って外すなど、眼鏡に左右非対称の力が繰り返しかかるとフレームが歪むことがあります。
できるだけ両手で丁寧に着脱する習慣をつけておくと、フレームの変形を防ぎやすくなります。
2. ずり落ちたまま使用しない
汗をかいたり活発に動いたりすると、眼鏡が鼻元からずり落ちることがあります。
頻繁にずれる場合は自己流でフレームを曲げるのではなく、購入した眼鏡店で再フィッティングしてもらいましょう。
ミヨスマートのよくある疑問
高額なレンズですが、保証はありますか?
A.保証内容は販売店によって異なります。
見え方への適応や度数変更、破損などに対する保証を設けている店舗もありますが、期間や対象条件は一律ではありません。
購入前に「度数が変わった場合」「見え方に慣れなかった場合」「レンズを傷つけたり破損した場合」それぞれが保証対象になるか確認しておきましょう。
購入後に近視が進んだ場合はレンズ交換が必要ですか?
A.「近視管理用眼鏡(多分割レンズ)ガイドライン(第1版)」では、等価球面度数で片眼または両眼に-0.50Dを超える近視進行が確認された場合、レンズ交換が推奨されています。
ただし、実際に交換するかどうかは調節麻痺下屈折検査などの結果を確認したうえで眼科医が判断します。
また、レンズ交換が必要になった場合に無料交換となるか、有料となるかは販売店の保証内容によって異なります。購入時に保証期間と条件を確認してください。
ミヨスマートの購入費は医療費控除の対象になりますか?
A.ミヨスマートだから自動的に医療費控除の対象になるとは言い切れません。
国税庁は、一般的な近視や遠視のために日常生活上必要となる眼鏡の購入費は、原則として医療費控除の対象にならないとしています。
一方で、医師による治療のために直接必要な一定の眼鏡については対象となる場合があります。
今回確認した国税庁の公開情報では、ミヨスマートそのものについて医療費控除の対象になるかを個別に示した記載は確認できませんでした。申告を検討する場合は、税務署や税理士などへ確認してください。
まとめ
ミヨスマートは、2026年6月1日に日本国内で販売が開始された、小児の近視管理を目的とした特殊な構造のメガネレンズです。
- DIMSテクノロジー:通常の近視矯正と同時に、周辺部へ近視性のぼけを作る特殊な光学構造を採用
- 研究結果:2年間のランダム化比較試験では、単焦点レンズと比較して近視進行と眼軸長伸長が少なかった
- 長期データ:6年間の追跡研究でも持続的な近視管理効果が報告され、中止後の明らかなリバウンドを示す証拠は認められなかった
- 年齢:臨床試験では5〜18歳が対象。5歳未満は推奨されず、実際の適応は眼科医が判断
- 近視度数:調節麻痺下の等価球面で両眼-0.5Dまたはそれを超える近視が目安
- 経過観察:装用開始約2週間後、その後は6か月ごとの眼科フォローがガイドラインで示されている
- 価格:複数の販売店ではレンズ代77,000円(税込)+フレーム代と案内されているが、店舗によって異なる
- 保証:期間や対象条件は販売店ごとに異なるため、購入前の確認が必要
参考文献・出典
- 近視管理用眼鏡ガイドライン作成委員会.近視管理用眼鏡(多分割レンズ)ガイドライン(第1版).日本眼科学会雑誌.2025;129:855-860.
- Lam CSY, Tang WC, Tse DY, et al. Defocus Incorporated Multiple Segments (DIMS) spectacle lenses slow myopia progression: a 2-year randomised clinical trial. Br J Ophthalmol. 2020;104(3):363-368. doi:10.1136/bjophthalmol-2018-313739.
- Lam CSY, Tang WC, Zhang HY, et al. Long-term myopia control effect and safety in children wearing DIMS spectacle lenses for 6 years. Sci Rep. 2023;13:5475. doi:10.1038/s41598-023-32700-7.
- HOYA ビジョンケアカンパニー「小児の近視用メガネレンズ ミヨスマート」一般向け製品情報・使用方法・注意事項.
- HOYA ビジョンケアカンパニー「メガネ店の皆さまへ|ミヨスマート」取扱条件・フィッティング・アフターフォロー.
- HOYA ビジョンケアカンパニー「ミヨスマート(MiYOSMART)を6月1日より国内で発売開始」2026年6月1日.
- 国税庁「医師による治療のため直接必要な眼鏡の購入費用」.

たなか 視能訓練士(ORT)
眼科医療の現場で10年以上、子どもの視力検査や近視関連の検査に従事。検査室で実際に受ける相談や、保護者が誤解しやすいポイントをもとに、専門的な内容をできるだけ分かりやすく解説しています。