「リジュセアとマイオピンは何が違うの?」
「点眼とオルソケラトロジーなら、どちらを選べばいい?」
子どもの近視進行を抑える方法には複数の選択肢があり、名前だけでは違いが分かりにくくなっています。
大きな違いを先に整理すると、リジュセアミニは国内承認された低濃度アトロピン点眼薬、マイオピンは国内未承認の低濃度アトロピン製剤、オルソケラトロジーは就寝時に特殊なハードコンタクトレンズを装用する方法です。
点眼を毎日続ける方法を選ぶのか、日中の裸眼生活を重視するのか、費用や家庭での管理をどう考えるのかによって、検討するポイントが変わります。
この記事では、リジュセアミニ・マイオピン・オルソケラトロジーの3つに絞り、効果の考え方、費用、承認状況、副作用・リスク、どのような場合に検討されるかを視能訓練士の立場から整理します。
リジュセア・マイオピン・オルソの違い
3つの方法は、近視の進行を考える際に検討される選択肢ですが、治療方法や管理の仕方が異なります。
リジュセアミニ
アトロピン硫酸塩水和物0.025%を含む、国内承認の近視進行抑制点眼薬です。通常は1回1滴、1日1回、就寝前に点眼します。
マイオピン
低濃度アトロピンを使用した海外製の点眼製剤です。日本国内では近視進行抑制薬として承認されておらず、国内で使用される場合は自由診療となります。取り扱う製品や濃度は医療機関によって異なります。
オルソケラトロジー
就寝中に特殊なデザインのハードコンタクトレンズを装用し、角膜の形状を一時的に変化させることで日中の裸眼視力を得ることを目的とする方法です。子どもの近視では、眼軸長の伸びを抑える効果についても研究されています。
リジュセア・マイオピン・オルソはどれが効果的?
3つを比較すると、「結局どれが一番近視を抑えられるのか」が最も気になるところだと思います。
結論からいうと、それぞれで近視進行を抑える効果を示した研究がありますが、異なる研究の数字を単純に並べて「この治療が一番効く」と判断することはできません。
対象となった子どもの年齢や近視度数、治療期間、評価方法、使用した製剤やレンズなどが異なるためです。
リジュセアミニ
リジュセアミニは、5~15歳の近視患者を対象とした国内第Ⅱ/Ⅲ相試験が行われています。
主要評価項目である24か月後の調節麻痺下の他覚的等価球面度数の変化について、0.025%アトロピン群はプラセボ群に対する優越性が確認され、近視の進行抑制を効能・効果として承認されました。
マイオピン・低濃度アトロピン
低濃度アトロピンについては、海外だけでなく日本の学童を対象とした臨床研究も行われています。
ただし、「低濃度アトロピン」という治療全体の研究結果と、特定の商品であるマイオピンの効果を完全に同一視することはできません。
オルソケラトロジー
オルソケラトロジーについても、小児の眼軸長の伸びを抑える効果を示した研究が複数報告されています。
一方で、オルソケラトロジーは点眼薬とは治療方法や対象、評価方法が異なるため、リジュセアなどの点眼試験の数値と直接比較することは適切ではありません。
リジュセア・マイオピン・オルソの費用・保険制度の違い
費用面では、3つの仕組みが大きく異なります。
リジュセアミニ|2026年6月から選定療養
リジュセアミニは薬価収載されていませんが、2026年6月1日から近視進行抑制薬が選定療養の対象として運用されています。
薬剤については保険外の特別料金を支払い、一定の診察や眼科学的検査については保険診療と組み合わせられる仕組みです。
薬剤の特別料金は全国一律ではなく、医療機関によって異なります。また、子ども医療費助成など公費の取り扱いは制度や自治体によって異なるため、実際の窓口負担は受診する医療機関で確認してください。
マイオピン|自由診療
マイオピンは国内未承認薬として使用されるため、原則として自由診療です。
薬剤費だけでなく、診察や検査を含めた料金体系は医療機関によって異なります。開始前に、薬剤費・診察費・定期検査費のどこまでが料金に含まれているか確認しておきましょう。
オルソケラトロジー|自由診療
オルソケラトロジーも自由診療です。
初期の適応検査やレンズ代だけではなく、定期検診、ケア用品、レンズ交換など継続的な費用が発生します。医療機関による料金差が大きいため、初年度だけでなく2年目以降に必要な費用も確認することが大切です。
どんな場合にリジュセア・マイオピン・オルソを検討する?
「この条件なら絶対にこの治療」という決め方はできませんが、何を重視するかによって相談するときの方向性は変わります。
コンタクトレンズの管理を避けたい
毎晩のレンズ着脱や洗浄・消毒が難しい場合は、低濃度アトロピン点眼を含めて眼科で相談する方法があります。
国内承認薬を希望している
点眼治療の中で国内承認薬を希望する場合は、リジュセアミニが候補になります。実際の適応は年齢や近視の進行状況などを確認して判断します。
日中をできるだけ裸眼で過ごしたい
スポーツなどで日中に眼鏡を外したい場合には、オルソケラトロジーを検討することがあります。ただし、角膜の状態や近視・乱視の程度などから適応できない場合もあります。
近視の進行が速い
まず年齢、屈折値、これまでの進行速度、必要に応じて眼軸長などを確認します。単独の方法だけでなく、医師の判断で併用療法が検討される場合もあります。
リジュセアとマイオピンは何が違う?
リジュセアミニとマイオピンは、どちらも低濃度アトロピンを用いる点眼治療です。
しかし、最も大きな違いは日本国内で近視進行抑制薬として承認されているかどうかです。
リジュセアミニは国内承認薬
リジュセアミニ点眼液0.025%は、2024年12月27日に「近視の進行抑制」を効能・効果として承認されました。
防腐剤を含まない1回使い切りタイプで、用法・用量は通常、1回1滴、1日1回、就寝前です。
マイオピンは国内未承認薬
国内で行われた臨床研究でも、Myopineは海外製品であり、医薬品医療機器等法上「未承認」として登録されています。
そのため国内で使用される場合は自由診療となります。
医療機関によって取り扱っている製品や濃度が異なるため、「マイオピンなら必ず○%」と一律に考えることはできません。
濃度だけでは製品の優劣を判断できない
低濃度アトロピンでは、濃度と近視進行抑制効果、副作用の関係を検討した研究があります。
ただし、異なる製品や異なる臨床試験の数字をそのまま比較し、「濃度が高い製品のほうが必ず優れている」と判断することはできません。
オルソケラトロジーは点眼と何が違う?
オルソケラトロジーは、リジュセアやマイオピンとは仕組みそのものが異なります。
就寝中に特殊なデザインのハードコンタクトレンズを装用し、角膜中央部の形状を一時的に変化させることで近視の屈折状態を矯正します。
レンズを外したあとも一定時間その効果が続くため、適切な矯正効果が得られていれば、日中に眼鏡やコンタクトレンズを使わず過ごせる場合があります。
ただし、角膜形状の変化は永久的なものではありません。装用を中止すると、時間をかけて元の屈折状態に戻っていきます。
子どもの近視進行抑制についても研究されている
オルソケラトロジーは屈折矯正法ですが、小児では眼軸長の伸びを抑える効果についても複数の研究が行われています。
一方、日本眼科学会のオルソケラトロジーガイドラインでは、問題点や合併症について十分に説明し、未成年者では保護者を含め慎重に処方することが求められています。
毎日のレンズ管理が必要
就寝中にコンタクトレンズを装用するため、衛生管理は非常に重要です。
洗浄や消毒が不十分な場合には角膜感染症などの合併症につながる可能性があります。子どもの場合は、本人任せにせず保護者が管理状況を確認できるかも重要な判断材料になります。
副作用・リスクと治療前に知っておきたいこと
リジュセア・低濃度アトロピン点眼
アトロピンには瞳孔を広げたり、目の調節機能に影響したりする作用があります。
低濃度製剤でも、まぶしさ、かすみ、近くの見えにくさなどが生じることがあります。
リジュセアミニの電子添文でも、羞明などが起こる可能性が示されています。症状の出方には個人差があるため、強いまぶしさや見えにくさがある場合は処方した眼科へ相談してください。
オルソケラトロジー
コンタクトレンズを使用するため、角膜感染症をはじめとしたコンタクトレンズ関連の合併症に注意が必要です。
また、装用初期には異物感を感じたり、夜間に光がにじむハロー・グレアなどを自覚したりすることがあります。
痛み、強い充血、急な見えにくさなどがある場合は装用を中止し、速やかに眼科へ相談してください。
開始年齢は年齢だけでは決まらない
リジュセアミニの国内臨床試験は5~15歳の近視患者を対象として実施されています。
ただし、実際の治療開始時期は年齢だけで決めるものではありません。現在の近視度数、最近の進行速度、眼軸長、目の状態などを確認して判断します。
オルソケラトロジーも、年齢だけでなく角膜形状、近視・乱視の程度、本人や保護者が安全にレンズ管理できるかを含めて適応を確認します。
リジュセアなどの点眼とオルソを併用することはある?
近視の進行状況によっては、医師が異なる方法を組み合わせることを検討する場合があります。
日本の8~12歳の子どもを対象としたランダム化比較試験では、オルソケラトロジーと0.01%アトロピンを併用した群と、オルソケラトロジー単独群が比較されました。
2年間の眼軸長増加量は、併用群で0.29mm、オルソケラトロジー単独群で0.40mmと報告されています。
ただし、開始時の近視度数によって結果が異なる可能性も示されています。すべての子どもで併用が必要、あるいは併用すれば必ず同じ上乗せ効果が得られるという意味ではありません。
現在の治療で近視がどの程度進んでいるかを確認したうえで、併用の必要性を医師と相談します。
リジュセア・マイオピン・オルソのよくある質問
リジュセアとマイオピンは同じ薬ですか?
A.どちらも低濃度アトロピンを用いた点眼ですが、同じ製品ではありません。
リジュセアミニは日本で近視進行抑制を効能・効果として承認された0.025%アトロピン製剤です。マイオピンは海外製品で、日本では近視進行抑制薬として未承認です。
リジュセアとマイオピンはどちらのほうが効果がありますか?
A.製品同士を単純に比較して、どちらが必ず高い効果を得られるとは言い切れません。
低濃度アトロピンでは濃度による違いを検討した研究がありますが、製剤や対象者、研究方法が異なります。承認状況、副作用、費用、近視の進行状況なども含めて判断します。
リジュセアとオルソはどちらがいいですか?
A.一律にどちらが良いとは決められません。
毎日の点眼を継続する方法と、就寝中にレンズを装用して管理する方法では負担や日中の見え方が異なります。近視の進行速度、角膜の状態、生活スタイルなどを確認して選びます。
リジュセアとオルソは併用できますか?
A.医師が必要と判断した場合に、低濃度アトロピン点眼とオルソケラトロジーの併用が検討されることがあります。
ただし、すべての子どもに併用が必要なわけではありません。現在の近視進行を確認したうえで判断します。
リジュセアは保険適用ですか?
A.通常の保険薬として薬価収載されているわけではありません。
2026年6月1日から選定療養の対象となり、薬剤については保険外の特別料金を支払いながら、一定の診察・眼科学的検査を保険診療と組み合わせられる仕組みになっています。実際の負担額は医療機関へ確認してください。
リジュセアを使えば眼鏡はいらなくなりますか?
A.リジュセアは現在ある近視を矯正して裸眼視力を上げる薬ではありません。
必要に応じて眼鏡やコンタクトレンズによる視力矯正を併用します。
近視抑制治療は何歳から始めますか?
A.年齢だけで開始を決めるものではありません。
年齢、現在の近視度数、最近の進行速度、眼軸長、目の状態などから、治療が必要か、どの方法が候補になるかを判断します。
まとめ
リジュセアミニ・マイオピン・オルソケラトロジーは、近視の進行を考えるときに検討される選択肢ですが、それぞれ治療方法や制度、管理方法が異なります。
- リジュセアミニ:国内承認された0.025%アトロピン点眼薬。2026年6月から選定療養の対象
- マイオピン:低濃度アトロピンを使用する海外製品。国内では未承認薬として自由診療で使用される
- オルソケラトロジー:就寝時に特殊なハードコンタクトレンズを装用する屈折矯正法。小児の眼軸長伸長抑制についても研究されている
それぞれで近視進行抑制効果を示す研究がありますが、研究条件が異なるため、「どれが一番効くか」だけで治療を選ぶことはできません。
現在の近視度数、最近の進行速度、眼軸長、生活スタイル、費用、家庭で継続できるかを確認し、眼科医と相談しながら選ぶことが大切です。
学校健診などで視力低下を指摘された場合は、まず眼科で近視の有無や程度を確認し、近視が進行している場合には近視進行抑制治療について相談してみてください。
参考文献・出典
医学情報・制度情報の最終確認:2026年9月1日
- PMDA:リジュセアミニ点眼液0.025% 医療用医薬品情報
- PMDA:リジュセアミニ点眼液0.025% 承認審査情報
- 厚生労働省:中央社会保険医療協議会 総会 第640回議事録
- 厚生労働省:近視進行抑制薬の選定療養に関する診療報酬請求の取扱い
- jRCT:0.01%アトロピン点眼液 Myopineを用いた特定臨床研究
- 日本近視学会:近視の進行抑制治療
- 日本眼科学会:オルソケラトロジーガイドライン(第2版)
- Kinoshita N, et al. Efficacy of combined orthokeratology and 0.01% atropine solution for slowing axial elongation in children with myopia: a 2-year randomised trial. Scientific Reports. 2020.

たなか 視能訓練士(ORT)
眼科医療の現場で10年以上、子どもの視力検査や近視関連の検査に従事。検査室で実際に受ける相談や、保護者が誤解しやすいポイントをもとに、専門的な内容をできるだけ分かりやすく解説しています。
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、特定の診断や治療効果を保証するものではありません。治療の開始・継続・中止については自己判断せず、必ず眼科医などの医療専門職に相談してください。