眼圧検査で「15mmHgくらいですね」と言われたあと、診察室で「緑内障の疑いがあります」と説明されると、「さっき眼圧は正常だったのに?」と戸惑う方もいると思います。
結論からいうと、眼圧が正常範囲でも緑内障になることがあります。
緑内障は眼圧の数字だけで判断する病気ではありません。眼底検査やOCT、視野検査などを組み合わせて、視神経に緑内障に特徴的な変化がないかを確認していきます。
この記事では、「眼圧は正常なのに、なぜ緑内障と言われるの?」という疑問について、眼科で10年以上検査に携わってきた視能訓練士の立場から解説します。
眼圧が正常でも緑内障になることがあります
緑内障というと、「眼圧が高い病気」というイメージを持っている方も多いかもしれません。
しかし、眼圧が一般的な正常範囲に入っていても緑内障になることがあります。これを正常眼圧緑内障といいます。
眼圧とは、眼球の中にかかっている圧力のことです。日本眼科学会では、通常10〜20mmHgが正常範囲とされています。
ただし、この範囲に入っているからといって、「視神経にも異常がない」という意味ではありません。
緑内障は、眼圧の数字だけではなく、視神経の形や視野の変化などを確認して診断します。
日本では正常眼圧緑内障が多く、緑内障の約7割を占めます
日本緑内障学会が行った「多治見スタディ」では、40歳以上の緑内障有病率は5.0%でした。
そのうち、眼圧が21mmHg以下の正常眼圧緑内障は3.6%を占めています。
日本では、緑内障のなかでも正常眼圧緑内障が多く、約7割を占めるとされています。
つまり、「眼圧が正常だったから、緑内障ではない」とは言い切れません。
眼圧は緑内障を考えるうえで重要な検査ですが、判断材料のひとつとして、ほかの検査結果とあわせて評価する必要があります。
眼圧だけでなくOCTや視野検査をする理由
眼圧が正常範囲でも緑内障になることがあるため、緑内障の検査では眼圧の数字だけを見て判断するわけではありません。
実際には、視神経の形や網膜の厚み、視野に異常がないかを確認しながら、総合的に評価していきます。
眼底検査|視神経の形を確認する
眼底検査では、目の奥にある視神経乳頭の形などを確認します。
緑内障では、視神経に特徴的な変化がみられることがあります。
そのため、眼圧が正常であっても、眼底検査で緑内障を疑う所見があれば、さらに詳しい検査を行うことがあります。
OCT|網膜の厚みを詳しく調べる
OCT(光干渉断層計)は、目の奥を断層画像として撮影し、網膜神経線維層などの厚みを詳しく調べる検査です。
緑内障では、視神経の障害に伴ってこれらの層が薄くなることがあります。
ただし、OCTで薄く表示されたからといって、それだけで緑内障と決まるわけではありません。
眼底の状態や視野検査、眼圧、過去の検査結果なども合わせて判断します。
視野検査|見えにくい場所がないか調べる
視野検査では、正面を見たまま周囲のどの範囲まで見えているか、見えにくくなっている場所がないかを調べます。
緑内障では、自分では気づかないうちに視野の一部が見えにくくなっていることがあります。
そのため、視神経の形を調べる眼底検査やOCTと、実際の見え方を調べる視野検査の両方が重要になります。
眼圧・眼底・OCT・視野検査は、それぞれ違う角度から緑内障の状態を確認するための検査です。
緑内障は自覚症状だけでは気づきにくい
緑内障は、初期のうちは自覚症状がほとんどないことも珍しくありません。
視野の一部に異常があっても、両目で見ている日常生活では気づきにくいことがあります。
そのため、「普通に見えているから大丈夫」とは言い切れません。
眼科で眼底やOCTの異常を指摘され、視野検査を勧められた場合は、自覚症状がなくても必要な検査を受けておきましょう。
また、1回の検査だけではなく、定期的に同じ検査を行い、視神経や視野に変化がないか確認することも重要です。
「緑内障の疑い」と言われたらどうすればいい?
「緑内障の疑いがあります」と言われても、その時点で緑内障と確定しているとは限りません。
眼底やOCTで気になる所見があった場合、視野検査を追加したり、一定期間をあけて同じ検査を行ったりして、変化がないか確認することがあります。
大切なのは、眼圧が正常だったから大丈夫と自己判断しないことです。
眼科で精密検査や定期的な経過観察を勧められた場合は、その理由を確認しながら受けていきましょう。
すでに緑内障と診断されて点眼治療をしている場合は、眼圧が正常になったからといって自己判断で治療を中止しないようにしてください。
よくある質問
眼圧が15mmHgなら緑内障ではないですか?
A.いいえ。眼圧が一般的な正常範囲に入っていても、緑内障になることがあります。
緑内障は眼圧だけではなく、眼底検査やOCT、視野検査などを組み合わせて判断します。
眼圧が正常なら安心していいですか?
A.眼圧が正常範囲だったという結果だけで、「緑内障ではない」と判断することはできません。
眼科でOCTや視野検査などを勧められた場合は、眼圧が正常でも必要な検査を受けておきましょう。
OCTで異常が出たら緑内障ですか?
A.OCTで異常を指摘されたからといって、それだけで緑内障と確定するわけではありません。
眼底の状態や視野検査、眼圧、これまでの検査結果などを合わせて判断します。
正常眼圧緑内障でも眼圧を下げる治療をするのですか?
A.はい。正常眼圧緑内障でも、治療の基本は眼圧を下げることです。
「すでに正常範囲なのに、さらに下げるの?」と疑問に感じるかもしれませんが、緑内障ではその人の視神経の状態や進行の程度を考えながら、治療前より眼圧を下げることがあります。
どの程度まで下げるかは一律ではありません。
治療中の方は、眼圧が正常だからといって自己判断で点眼を中止せず、担当の眼科医の指示に従ってください。
まとめ
眼圧が正常範囲でも、緑内障になることがあります。
特に日本では正常眼圧緑内障が多いため、「眼圧が正常だから緑内障ではない」とは判断できません。
緑内障は、眼圧だけではなく、眼底検査やOCT、視野検査などを組み合わせて評価します。
そのため、「眼圧は正常だったのに、緑内障の疑いがあると言われた」というのは矛盾ではありません。
眼科で精密検査や経過観察を勧められた場合は、必要な検査を受けながら、どの検査結果から緑内障が疑われているのかを確認してみてください。
すでに治療を受けている方は、眼圧が正常になっていても自己判断で点眼を中止せず、担当の眼科医の指示に従いましょう。
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、特定の診断や治療効果を保証するものではありません。治療の開始・継続・中止については自己判断せず、必ず眼科医などの医療専門職に相談してください。