多焦点眼内レンズとは?|万能じゃない理由
白内障手術の選択肢である「多焦点眼内レンズ」は、遠近両方の視力を補う画期的なレンズです。 「裸眼ですべて見える」と期待して選ぶ方が多いものの、実際には万能ではありません。 手術後に「思ったより見えない」「ぼやける」と戸惑う声が現場では多く聞かれます。
よくある相談5選|現場で患者さんから聞くリアルな声
1️⃣ 近く(30cm)が思ったほど見えない
ピントの合う範囲を広げた「焦点深度拡張型(EDOF)」は、手元30cm付近の鮮明さが不足しがちです。 読書やスマホ操作を快適に行うには、補助的に“手元用メガネ”が必要になるでしょう。
2️⃣ にじんで見える・光がまぶしい
光を振り分ける「回折型」レンズでは、夜間の光がにじむグレア・ハロー現象が起こりやすい傾向にあります。
3️⃣ 遠近の切り替えに違和感がある
脳が複数のピントから必要な情報を選択しなければならず、慣れるまで違和感を覚えるかもしれません。
4️⃣ なんとなくぼやける
「全距離がそこそこ見える」代わりに「特定の距離が突き抜けてハッキリ見える」わけではないのが多焦点の特性です。
5️⃣ 慣れるまでに時間がかかる
脳が新しい映像に順隔するまで、数週間から数ヶ月ほど要する場合もあります。
なぜそうなる?見え方の仕組みと限界
多焦点眼内レンズは、大きく分けて2つのタイプが存在します。| タイプ | 特徴 |
|---|---|
| 焦点深度拡張型(EDOF) | 中間距離までスムーズに見えるが、手元の細かい文字には弱い。 |
| 回折型 | 遠・中・近すべてに対応するが、夜間のまぶしさやコントラストの低下が起きやすい。 |
こんな人は注意!多焦点が向かないケース
- 完璧な見え方のクオリティを求める人
- 細かな見え方の違いを気にしてしまう人
- 仕事などで夜間の運転が多い人
- 強い角膜乱視がある人
- コントラスト感度(色の濃淡を見分ける力)が低下している人
納得できる手術のために|不安は事前に相談しよう
多焦点眼内レンズを選ぶ際は、利便性と欠点の両方を正しく理解してください。 ご自身が「どのような生活シーンを重視したいのか」を明確にしましょう。 視能訓練士の立場からも、手術前にご自身でしらべ、わからないことをしっかり医師と相談しましょう。
まとめ
多焦点眼内レンズは非常に便利な選択肢ですが、すべての距離で完璧な視力を約束する「魔法のレンズ」ではありません。メリットとデメリットをわかったうえで、ライフスタイルに合った選択をしましょう。白内障手術や眼内レンズの選択で迷われたら、まずは専門医や視能訓練士へお気軽にご相談ください。詳しく解説した記事もいくつかあるのでよかったらあわせて御覧くださいね。shiryokulife.hatenablog.com
本記事の参考文献・出典
本記事の内容は、以下の学会が公表している診療指針・公開情報を参考に構成しています。
- 日本眼科学会:眼科診療ガイドライン
白内障を含む眼科疾患全般の診断・治療方針に関する国内標準指針。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断を代替するものではありません。手術適応やケアについては必ず眼科で相談してください。